学生のアマチュア無線Q&A/そもそも...
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JI3KDHさんの答え中学生時代に免許を取得して以来、時にはガッツリと、時には細々と、時代によってはほぼ忘れたりするときもありましたが途切れず続けてきたアマチュア無線。とはいうものの、あなたの趣味はと尋ねられてアマチュア無線ですと答えていたのは高校生時代までで、それ以降はバイクでツーリングとかボーっとするのが趣味とか、当たり障りのない答えに終始してます。そんなにしゃかりきになってやってないというのもあるのですが、アマチュア無線そのものの説明が面倒くさい。興味のない人に苦労して説明してまで理解してもらう必要も全くないですし。
だいたい『今どきネットもケータイ(死語)もあるのに、それって何が面白いん?』て言われたら返す言葉もないですよね。通信するだけ、会話するだけが目的なのでしたら全くもってその通り! なのですから。 ところが、今これをご覧いただいてる皆さんは少しは興味を持っていただいているはずとのことですから、アマチュア無線ってなんやねん、何がオモロいねん、ってところをさわりだけでもご紹介できればと思い、これを書いてます。 ここで突然法令が登場します。「アマチュア無線をやっている」ということはすなわち「アマチュア局を運用している」ということになるのですが、この『アマチュア局』。放送局も含めた数ある無線局の中で法的にちゃんと定義されています。 電波法施行規則第四条二十四 アマチュア局 アマチュア業務を行う無線局をいう。 なんじゃそりゃ? ですよね。もちろん、この『アマチュア業務』についてもしっかり定義されています。 電波法施行規則第三条十五 アマチュア業務 金銭上の利益のためでなく、もつぱら個人的な無線技術の興味によつて行う自己訓練、通信及び技術的研究その他総務大臣が別に告示する業務を行う無線通信業務をいう。 アマチュア無線従事者免許の勉強をしたことのある方なら間違いなく見たことのあるこれ、ここに重要なことが書かれてるんです。金銭上の利益のためではないというのはもっともで分かりやすいのですが、ポイントはその次『もつぱら個人的な無線技術の興味によつて行う自己訓練、通信及び技術的研究』この部分なんです。 蛇足ながら、もつぱら(もっぱら)は漢字にすれば 専ら となります。つまり それらのみ ってことですよね。 これ、実は結構すごいことなんですよ。数ある無線局の中で、素人が自分で作った装置を使って堂々と合法的に電波を発射することができる。こんな無線局は我が国ではアマチュア局以外にはありません。装置の中には付加装置もありますが、当然のことながらその気になれば一から十まですべて自分で作る、なんてのも不可能ではありませんし、実際そのような装置をお使いの方々も少なくありません。 さらに『もつぱら個人的な無線技術の興味によつて行う自己訓練、通信及び技術的研究』はなにも装置やアンテナ(もちろんこれも自作可能)だけの話ではありません。こういうことをやればどこまで飛ぶのか、こういう状況ではどんな飛び方をするのか、実際のところ今もって解明し切れていない部分もあり、その部分に焦点を合わせて追求していく楽しみもあります。 だいたい、アマチュア以外のプロの世界では、通信ができるかできないか分からないとかいう状況はあり得ません。スマホを新規に購入しようとするとき、うちの電波はつながったりつながらなかったりします、なんてキャリアは契約以前に存在があり得ないですよね? ところがアマチュア無線ではそれが大いにあるんです。届くかどうか分からない、ギリギリの状況で届かせるにはどうすればいいか、どんな条件ならいいか、同じ状況でも届いたり届かなかったり、その差はどこから出てくるのか。おぉ、こんな条件でも届いたぞ! ここに興味を持って取り組むのがアマチュア無線、『もつぱら個人的な無線技術の興味によつて行う自己訓練、通信及び技術的研究』なわけです。 皆さんはモールス信号をご存じでしょうか。タイタニック号がいよいよ沈むとき、SOSを打電したというあれです。人類が電波を使い始めた当初は、今のように音声を含めた情報を電波に載せる技術がなく、ただ電波があるかないかしかなかったため、そのあり・なしで意味を伝えるべく開発されたのがモールス信号(例えばトツーがA、ツートトトがBなど)なのですが、これは今ではプロの世界では(船舶局も含め)一切使われなくなってしまったんです。 ところが、届くかどうかギリギリの場合が少なくないアマチュア無線だけは、まだまだ現役で使われています。『もつぱら個人的な無線技術の興味によつて行う自己訓練、通信及び技術的研究』にはまだまだ不可欠、というわけですね。 もう一つ、今のアマチュア無線界ではPCを利用したディジタル通信が主流となっています。場合によっては音声やモールス信号以上に使われていると言っても過言ではありません。この通信方式、実はアメリカのノーベル物理学賞受賞者が開発したものなのですが、アマチュア無線の可能性が伺える一例ではないかと思います。 そんなわけで、決して『通信するだけ、会話するだけが目的』なわけではないというのが少しでもご理解いただけたなら嬉しく思います。 | |||||